◆放射線+抗がん剤 すっかり消滅、食欲も戻る◆
「食べ物の通りが悪いわ」――。千葉県流山市の武藤アヤ子さん(75)が、のどの異変に気づいたのは、95年4月。食事はもっぱらそうめんに。ツルツルと入るからだが、食べられる量は少なく、体重も減っていった。
7月、すい臓がんで入院していた夫(当時73歳)が亡くなった。葬儀の日、おむすびが飲み込めなかった。おかゆも通らなくなり、たまらず病院へ行って検査を願い出た。
内視鏡検査が終わり、口から抜かれた器具は血だらけ。「たぶん喉頭(こうとう)がん。ここでは手に負えない」と、国立がんセンター東病院(同柏市)を紹介された。
詳しい検査で、診断は「食道がん」。病巣は長さ7センチにもなって食道をふさぎ、隣の大動脈にも食い込んでいる。最も進行した4期だった。
「手術はできません。ただし、100人中20人は助かる方法があります」。消化器内科医長の大津敦さん(42)が提案したのは、放射線と抗がん剤の「併用療法」だった。
5FUと呼ばれる抗がん剤を、土日を除く毎日、2週間点滴し、放射線も照射。シスプラチンという別の抗がん剤も1日目と8日目に点滴する。これを5週間ごとに、2度行う。
7月半ば、治療が始まると、だ液すら飲み込めない状態の武藤さんに、激しい吐き気と震えの副作用が襲いかかった。「夫もいなくなったのに、こんなつらい思いまでして何になる」。そう思ったが、遠方から毎日看病に訪れる娘や、自分を励ます息子の姿に、「なんとしても生きよう」と考え直した。
テレビを見る時はあえて料理番組を選び、「治ったら、あれを食べよう」と自らを鼓舞。2度目の治療も迷わず受けた。
10月中旬、大津さんから「退院の日程を決めなくては」と言われ、娘と抱き合って喜んだ。がんは、すっかり消えていた。
食事に不自由がなくなり、体重が増えた。今は、趣味の詩吟やちぎり絵を楽しむ毎日だ。
東病院では、92〜97年に、がんがリンパ節や他の臓器に広がり、手術できない3期と4期の食道がん患者54人が併用療法を受けた。そのうち18人(33%)はがんが消失。3年後の生存率は23%だった。「手術できない重症例であることを考えると、効果は高い」と大津さん。
それなら、より軽度ながんにも有効なはず――。東病院では、他の臓器に転移のない中期進行がん患者39人にも併用療法を実施した。その結果、4年後の生存率は46%と、手術した場合とほとんど変わらず、再発率では、手術より低かった。
食道を切除し、食事や肺機能にも影響が出る手術に比べ、併用療法のマイナス面は小さい。大津さんは「順調なら1か月で退院できる手術に比べ、併用療法は治療に時間はかかるが、その後の患者の状態は、はるかに良く、治療の選択肢になる。薬剤も進歩し、今後さらに成果が期待できる」と話している。
〈関連情報〉
◆国立がんセンタ−東病院
〒277−8577
千葉市柏市柏の葉6−5−1
電話=0471−33−1111
(2000年7月21日)
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