ガン病棟からの脱出

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東京女子医科大学病院編

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12月3日  東京女子医大の大川智彦放射線教室主任教授と面談

             大川『勝算はあります。抗ガン剤を多少併用しますが、副作用について余りお

      考え過ぎぬよう。』診察券

      僕『宜しくお願い致します。』

      紹介状さらに国立がんセンター中央病院から持ち出した資料を渡し、ベッド待

      ちの手続きを行う。

      『抗ガン剤かぁ』抜け毛対策にRogaine5%を発注する。

 

  同夜  居酒屋で友人N氏とこれまでの経緯を話していると、隣の席から 『話題に入

      れて』と老人が言う。

      老人は、妹が慶應病院に入院している事、 『親戚を呼んで下さい』 と一週間

      前に言われ看病に疲れた事、さらに妹が可哀相だから医師に痛み止め以外

      は止めて欲しいと頼んでも肺への負担が増えるからと断られた事、を語った。

      尊厳死協会に入っていればと後悔しきりの様子だった。先程来こちらをチラチ

      ラ見ている若者がいた。 知ってか知らずか実質4人での対話となった。ところ

      がその若者がスーと立ち上がり出ようとする。

      僕『あのー、もしかして気分を害す話でもしましたか?』

      若者『慶應の医学生です。』 きっと妹さんの魂が引き合わせたんだ。

 

   5日  腹痛。夜、救急指定の西荻中央病院へ急ぐ。 診察券

      担当は、村上医師だった。

      村上『腸閉塞か腸捻転を起こし、腹膜炎の初期です。誰が診ても明らかで

      す。』

      僕『食道ガンのためにベッド待ちの身の上なんですが......』

      村上『ウチでも食道ガンの手術は出来ます、入院なさいますか?』

      ハァ、写真(レントゲン)も撮らずに決めつけられた。誰が手術待ちと言いまし

      たか?

      「中小の病院で一番危険なのは、未熟な医師のやりたがり精神」p79*

      「医師たちは、患者さんが来ると、何とか言いくるめて入院させ、中途半端な

      腕前と設備で大きな手術にいどむ」p80*

      早々に立ち去る。

                    *(注)講談社文庫 近藤誠著「安心できるがん治療法」

   6日  腹痛収まらず、東京女子医大へ行く。

      間が悪いとはこういうもんで、創立記念日のため休みだった。

      当直の放射線科医を呼ぶから待てとの事。

      オイ、腹が痛いの、内科か外科でしょう?

      「放射線科の主治医としての立場や体面に配慮してくれるわけですが、これ

      は要するに、ヤクザの世界と同じです。俺の患者に手を出すな。」p103*

      困ったもんだ。

      程なく放射線科当直、関医師の指揮の下、他科の医師と相談し撮影。

      レントゲン、超音波にて問題なし。痛み止めの薬を頂いた。

 

 翌7日  腹痛は和らぐも消えなかった。仕方なし自分で運転して東京女子医大へ向か

      う。

      初めて唐沢久美子助教授の診察を受けた。痛み止めの注射および栄養ドリ

      ンク。

      帰宅途中、携帯に入院日決定の知らせが入る。

 

   8日  入院日、午後にスタッフとの顔合わせがあった。明日から本格的治療との

      事。

      Dr.Sよりメール『今度程、自分が健康であること有り難く思い、健康な空腹を

      感謝する気持ちになった事はありません。運を天に任せ、しかし、勇気を持っ

      て立ち向かってください。』

   9日  治療なし。検査のみ。

  10日  午後1時外泊許可下りる。一時帰宅、途中でポケベル(500円)を入手した。

  12日  H氏が大阪より来る。午後から蕎麦屋にて思い出話に花を咲かすが、病院の

      門限が迫る。共にヨーロッパを闊歩した友との別れが新宿駅の缶珈琲とは何

      たる皮肉!再会を約し別れる。

  13日  食っては寝るの繰り返しに 『治療はどうなっているのか?』 と担当磯辺まどか

      医師に問う。『治療のための順番待ち』 との返事。

  14日  早一週間、何も治療せず、抗ガン剤の副作用食欲不振に対処すべく液体栄

      養剤の味比べを行う。エンシュア・コーヒー味に決める。

 

  15日  午後2時;突然、大川教授から話があるとの事。

      大川『本日から休職になります。しかし、プロトコール(治療計画書)は出来て

      いますのでご心配なく。』 突然の話というので「実はステージが上がり」等と

      想像していたので一安心。 

      午後4時;いよいよ明日から放射線を当てる位置の最終決定段階に来た。

      平らな所に寝かされバリュームを飲み、レントゲン撮影をした。 女医

      何度も何度も飲んだ。

      しかし、OKは出ない!?

      徐々に心配になってきた。

      僕『まだ飲むんですか?』

      磯部医師『実は撮影がうまく行かないんです。ここでは無理ですから斜向か

      いの別館の方で検査して再度やり直ししましょう。』

      僕『どの位待つのですか?また一週間?』

      磯部『それより早いかもしれませんし、遅いかもしれません。』

      国立がんセンターから持ち出したフィルムにはシッカリと写っている。機材の差

      か?技術の差か?僕『これまでの一週間何だったんですか? もう一週間待

      てと仰るのですか? もう止めましょ、ケチが付きました。』 

      私は検査室を出て行きDr.Sに電話した。『話にならない、もう退院します。』

      『また一から検査になり、時間を失うことになる。一晩待て!!』

 

          納得できる病院を探し、それでタイムアウトなら本望!

 

      そこへ唐沢助教授が現れ『撮影予定何とか早くなるように手配します。明日は

      出張がありお目にかかれませんが退院は待って下さい。』 と言う、しかしまた

      一週間待つのでは話にならない。

      唐沢『誰が一週間待つと言いましたか?』

      僕『磯部先生です。』

      唐沢『このフィルムでも放射は出来ます。』

      コントラストのないフイルムを見せて、

      唐沢『30ミリ広く当てますから外れる事はありません。しかし、万全を期した

      いので、再度の撮影と言ったのです。』

      これまでの一週間は何だったんだ、写真の結果を予測出来なかったのか?

 

      さらにバリューム後の下剤を私が催促する始末・・・・・

 

      焦り怒り落胆、複雑な思いが錯綜する! 止めていたタバコに火を点け考え

      る。

      自棄になってどうする!酒を飲んで頭の回転が良くなるのか?不思議と冷静

      な判断力が沸いてきた。選択肢は?担当医を変える!誰に?関先生?キャ

      リアーは?病院を変える?何処へ?

 

          脳ミソがオーバークロックで動き出す!FRIDAY

 

      僕が煙草を吸うので喫煙所の面々は当惑気味だった。当惑しているのはこ

      ちらの方です。これまでの経緯を話すと、一人が心当たりがあると言う。

      『夏ごろFRIDAYに出てた、これしかない。』

      そんな事情が事実なら、患者どころではないのが人情だ。

      教授がコケれば助教授とて運命共同体、それが組織というものだ。

      結論 脱出しかない!

 

      病室に戻り、ネットから入手した情報の山を見ていた(携帯電話とパソコンは

      持ち込み禁止だからモノクロのプリントアウトにて持参)。

      どこに移るか?優れた装備を誇示する国立がんセンター放射線科治療グループ

      のページを見ながら、うらめしく思った。(組織変更のため、リンク先をより有用なページに変更しました。2004/5/11)

      しかし、それは勘違いだった!がんセンターはがんセンターでも小さく東病院

      と書いてある。

      つまり、中央病院の情報と東病院の情報がゴチャマゼになっていたのだ! 

 

      サイトを構築する場合、統一したイメージで創る事は定石だ。しかし、同じ色、

      同じデザイン、これでは上から順に見てこないと、同じ病院と錯覚します。

      緊張の糸が緩む。深夜3時、床に就く。

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